何気ない一言

「子どもは?」
何気ないこの一言で、いままで張り詰めていたものが、プツリと切れたような気がした。
時代が変わったとはいえ、やはり女性は結婚して子どもを生まなければ評価されないのか…


新しい職場に来て一月半ほど経った。
仕事量も責任もかなりのもので、それでも文句一つ言わず、決して手抜きをせずに頑張ってきた。
残業などほとんどしなかった私が、連日の残業… そして休日も家で仕事をしている。
「なんとか来てもらえないだろうか?」とお願いされてやってきた職場。
わたしがこの職場にこられたのも、これだけの仕事量をこなしているのも、わたしに子どもがいないからできること。
だから、この職場では今までさんざん言われてきた「子どもの予定は?」「子どもまだ作らないの?」といった質問は絶対にされないと思っていた。
実際、一月半は言われなかったので、この職場ではそんなこと言う人はいないのだろうと思っていた…


わたしは世間一般的に言わせれば、結婚はかなり遅いほうだった。
結婚するまでは、「いつ結婚するの?」「なんで結婚しないの?」とさんざん言われてきた。
結婚してやっとその言葉から逃れられると思ったら、「子どもは?」「早く作らないと年齢的にまずいでしょ。」と言われるようになった。


結婚しない理由は、人それぞれ。
そして、子どもを作れない、作らない理由も人それぞれ。
欲しくてもできない人、身体的には問題なくても人には言えない深い理由があって作ることができない人…


「子どもは?」
この何気ない一言に、傷ついている女性はどれ程いるのだろう。
「子どもいないと好きなことできていいね。」
「子どもいないとお気楽でいいね。」
確かにそうかもしれない。
だけど、産休、育休、急な子どもの熱での休み… 
この代わりを子どものいない女性たちがどれ程カバーしてきたのかを知っているのだろうか?
子どものいない女性には、親の気持ちがわからないという。
確かにそうかもしれない。
だけど…
普通に親になれた人たちに、子どものいない人の気持ちがわかるのだろうか?
子どものいない人たちは、子育ての苦労も知らないけれど、子育ての喜びも経験することができないのだから…